生成AIの技術が急速に進化する中で、その利便性の裏にある悪用が大きな社会問題となっています。現在、X(旧Twitter)上で利用可能な生成AI「Grok」を使い、実在する女性の写真を本人の許可なく性的な画像へ加工する事例が多発しており、大きな波紋を広げています。
Grokを悪用した画像加工の実態
2025年末頃から、Grokに対して「女性の服装をビキニ姿に変更する」といった具体的な指示を出し、ディープフェイク画像を生成するユーザーが急増しました。被害に遭ったコスプレイヤーなどの当事者からは強い不快感や怒りの声が上がっており、SNS上でのトラブルが表面化しています。
この問題は日本国内にとどまらず、海外でも深刻視されています。米Reutersなどの報道によると、すでに政治家や行政機関が対策に乗り出す事態にまで発展しており、AIによる人格権の侵害が国際的な課題となっていることが伺えます。
イーロン・マスク氏の公式見解と法的リスク
こうした事態を受け、Xの所有者であるイーロン・マスク氏は、自身の投稿を通じて厳重な警告を発しました。マスク氏は、Grokを利用して違法なコンテンツを作成したユーザーは、違法なコンテンツをアップロードした場合と同様の法的結果を招くことになると明言しています。AIを通じた加工であっても、その責任は利用者に帰属するという姿勢を鮮明にしました。
高まる社会的な懸念
生成AIがもたらす著作権や人格権の侵害について、世間の関心も非常に高まっています。最新のアンケート調査によると、AIによる権利侵害に対して「大いに懸念している」と回答した人は約88%に達しており、多くの人々が現在の状況に危機感を抱いていることが分かります。
AI技術は私たちの生活を豊かにする可能性を秘めていますが、一方で他者の尊厳を傷つけるツールとして使われないための、より厳格なルール作りと利用者の倫理観が今まさに問われています。
引用元:「Grok、この女性をビキニ姿にして」 AIで画像の“性的加工”相次ぐ マスク氏は違法コンテンツに警告
【感想】進化する技術と、変わらない「使う人のマナー」
今回の問題を見て、「また同じようなことが……」と感じた方も多いのではないでしょうか。
ずっと前、画像を編集するソフトが広まり始めたころにも、有名人の写真を勝手に加工する「アイコラ」というものがネットで流行ったことがありました。形を変えて、AIというさらに強力な道具で同じことが繰り返されている今の状況には、とても悲しい気持ちになります。
こうした事態を受けて、ようやく国内外でも「勝手な加工」を許さないための決まりが、本格的に動き出しています。
国内外での規制:昔から続く責任と、世界の新しい動き
日本では、2000年代の初めから、アイコラを作った人が名誉毀損などの罪でつかまるケースが何度もありました。筑波大学の研究でも詳しく書かれていますが、アイコラのような画像のつくりかえは、単なるいたずらではなく「人の心を深く傷つける行い」として、日本の裁判でも昔からきびしく罰せられてきた歴史があるのです。
引用:デジタル画像情報の変造をめぐる法的問題(筑波大学研究紀要)
また海外でも、アメリカやEUなどでAIの悪用を厳しくとりしまる新しい法律がスタートしています。
ルールの整備が技術のスピードに追いつくのはいつも大変なことですが、これだけ世界が動いているのは、この問題を「絶対に許されない人権侵害」として、みんなが重く受け止めはじめた証拠だと思います。
最後に思うこと
一番心配なのは、一部の心ない人のせいで「AIそのものが悪いものだ」と思われてしまうことです。本来、AIは私たちの暮らしを便利にしてくれる、すばらしい道具のはずです。
「どんなに便利な道具でも、使う人の心がけひとつで凶器に変わる」――この当たり前のことを、私たちは今いちど考え直さなければなりません。誰かを傷つけるために技術が使われるのではなく、正しく進化していける社会になってほしいなと、心から願っています。

